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「……ふぅん…」
ん?……
目が覚めるとソコは知らない部屋だった。
あ・れ?
……えっと……
「目、覚めた?」
すぐ横で声がした。
声の方に顔を向けると、男の人がいる。
あれ? この人……
「……大丈夫?」
この人……
「あの、もしかして、覚えてない?」
『覚えて』?
私はその人の手をしっかり握っていて、その人はベッドに凭れて座っていた。
体を捻って私に顔を向けてくれてる……
「……大丈夫、覚えてるよ」
昨日の失態も全部、覚えてる。
恥ずかしいけど、それ以上に嬉しくて、握っていた手に頬擦りした。
よかった。彼がそう言って笑った。
望んでた通りの満ち足りた朝。
好きな人と過ごす、はじめての朝。
彼がとても眠そうなのを除いては、絵に描いたように幸せだ。
「どこか行く?
食べるものもないし…… なんか美味しいもの食べに行こう」
それって、もしかして……
「デート?」
彼がフッと横を向いた。
あれ?
「そうなるかも……」
あれ? もしかして……
「……照れてる?」
「…シャワー浴びてくる!」
ん? あれ……
そうか、そう言えば、結局彼、お風呂行かなくて……
彼が立ち上がって部屋から出て行く。
そんな姿をボーッと見ていた。
デートか……
デートなんだよね。
まだ、午前中…… ってことは、丸一日デートになるのかな?
勝手に顔がにやけてしまう。
そうだ! 彼がシャワーを浴びてる間に着替えてしまおう!
いつまでも彼のシャツ着ているわけにいかないし……
洗顔とかは今は仕方がないけど、着替えだけでもすませてしまおう。
彼のベッドに座ったまま、自分の荷物を引き寄せ、シャツの裾を持って一気に脱いだ。
……カタン。
え?
「忘れ物…… え? わぁ!」
音のした方を見ると彼がいて、一気に顔を赤くした。
あっ……
私も条件反射のように手で前を隠したけど……
「ごめん!」
背を向けた彼の反応がこそばゆくて、だって、もう私は全部赦してる。
だから、隠す必要もないんだ。
「何が?」
彼にだっただいいよね?
こんなふうに曝け出しても、いいよね?
「……私、エロいかな?」
羨ましがられたり、気持ち悪がられたり、『おかず』にされたり……
彼がゆっくりこっちを向いた。一つ息を吐く。
「……エロいよ」
彼の言葉がチクッと胸に刺さった。
「エロくないわけないだろ? 好きな女にエロさを感じないわけない」
彼が近付いてきて、私の顔を覗き込む。
ゾクッとするほど熱っぽい視線。切れ長の綺麗な優しい目だ。
「今すぐ喰い付きたい。
木瀬さんの胸は征服しがいがあるしね」
首筋に彼の息がかかる。
肩に彼の額があたる。
「ムチャクチャ、エロい」
熱い息がむき出しの先端にかかる。
背筋の下の方がゾクゾクする。
今にも彼の口に食べられてしまいそうで、クラクラしてた。
「でも一番エロいのって、その目だよな。
ゾクゾクして見てられない…… 唇も……
濡れて、誘ってる」
堪えられない。
ベッドに崩れると真上に彼がいた。
「なぁ、どこまでならいいと思う?」
眩しくて、恥ずかしくて、両手で顔を覆った。
「俺が彼氏なら、自分の女が他の男と…… なんて考えられない。許せない」
何を言ってるんだろう?
「もう、この時点で、ありえない。
イヤ、昨日の時点だよな? 他の男に手を引かれてるとか、一つの部屋にいるとか」
彼の息が首元にかかる。
近付いてきてる? 熱が増してる。
「すでに罪を犯してるなら、最後までいってもいいと思うか?」
それはつまり……
それはつまり……
急に周りの空気が薄くなったように、息が上手く出来ない。
それはつまり……
両手で目を隠したまま頷いた。
躊躇うことはなかった。
「ぅんっ……」
「顔は隠さないで……」
両手が彼につかまってる。
そのまま顔から離されて、頭の上で一つに重ねられた。
「あ……」
彼の残りの手が胸から腰にかけて体の上を滑っていった。
「っふん」
隠せなくても、直視なんて出来ない。
彼から顔を反らすと、胸に柔らかい痛みが走った。
「エロいよ。俺がちょっと触っただけでもう固くなってる」
今度は逆の胸に濡れた感触がある。それは固くなった部分を転がすように動いて温かなものに包まれた。
「あっ……」
片側の胸は掌で大きく揉み上げられて、指に焦らされた。
「キミが寝てしまってからずっと後悔してた」
彼の息が熱い。
「何にこだわってるのか、わからなくなった」
彼の声が直接心に響く。
「……俺等、共犯だから……」
彼が自分の前髪を結わえていたゴムをとった。
フワリと黒い髪が顔を覆う。ゾクッとした。髪の間から見える瞳は熱を帯びて濡れていた。
彼のキスがふってくる。
舌が奥まで挿いってきて、口の中全部を攻めた。
背筋がゾクゾクして、体の奥が痺れた。
「……あっ、あ…… ジンジン、する……」
苦しい。
苦しくて……
早く、早く……
「…ん?」
「あ!」
モゾッて何かが動いた。
「あ!」
足と足の間を何かが弄ってる。
「んんっ!」
ギュッと力が入った。
『怖い!!』彼に捕まっていた腕を力任せに振りほどいて、彼の首にしがみついた。
あっ! 奥に何か感じる。何か動いていて……
ギュッと両腕に力を込めた。
押し広げられるはじめての痛みが想像したことがなくて、どうしようもなく怖い。
「……木瀬さん、もしかして、はじめて?」
「…っふ」
知らない間に涙が出ていた。
「……あ、あ……」
上手く声にならない。
彼の首を片手で抱いたまま、ショーツの中にある彼の手に手を重ねた。
首だけで彼に応えると、「……そう」優しい声が返って来た。
そのまま彼の指がそこで優しく動く。
何かを探してるように、深く浅く動いて……
彼の指の動きに合わせて、体がビクンと弾けた。