This is love 〜*

26


「滉平くんの申し出は有り難いが… 君の方のご実家はなんと言ってるんだい?」


昨夜2人でベッドの中でした話を朝一番でお父さんとお兄ちゃんに伝えた。
お兄ちゃんが家を出る前にって、朝の弱そうだった滉平さんが「絶対早く起こして」って言ってくれて…
必死で目を覚まそうとして頭を振ったり、目を擦ったり、伸びをしてるところが何となく可愛かった。


お父さんに言われるまで、正直、滉平さんの実家の事、頭に無くて…
やっぱり、そういうお話は先に御了承頂くのが礼儀だって怒られて…


今、滉平さんと私は、彼の実家に向う車の中にいた。


「滉平さんのご家族ってどんな方なんですか?」

「どんなか… 難しいな? 普通だとは思うんだけど… 志穂? 緊張してる?」


言い当てられて、ピンと背筋が伸びてしまった。
ゆったり腰を下ろせるはずの助手席のシートの上で凭れずに背を真っすぐに伸ばしてしまって…
チラッと横目でそれをみた滉平さんが笑いを堪えてる。


「うん。わかる。緊張するよな? 俺も昨夜、経験したからね。わかるよ…
けど、そんな力入れなくていいから、気楽にいって…
俺ん家は『あぁ、そう』で終わるから… そんな力入ってると拍子抜けするよ」


それから御家族の事を少し教えてくれた。
「父1人、母1人…」 ここまで聞いてそんなのわかってます! って叫んだら笑われて…
「兄1人、弟1人…」 5人家族って事がわかった。
男ばっかりだから、女の子は貴重! なんですって…


それからお兄さんはもう結婚されていて、「聞いてるのは」子供1人。「たぶんね。増えてなかったら…」
実際、滉平さんもここのところ帰っていなかったようで、細かいことがわからないらしい…
そして弟さん… 「今、まだ高校生かな? あれ? 次、卒業だっけ?」ってこれもアヤフヤ…
随分、年が離れてるんだなって思った。
お兄さんとは4つ、弟さんとは8つ…


「ハァ…」


知らないうちに出てしまったため息は、また滉平さんを笑わせる元になった。
滉平さんの笑顔は好きだけど… 好きなんだけど… ハァ…


「だから、緊張しなくていいって…」

「そんなこと言われても… ムリ!」

「…ヤバいな。そんな志穂って可愛いすぎ」


そんなことをいう滉平さんは終始上機嫌で鼻歌まじりのドライブ。
確かに、昨夜、滉平さんの家から送ってくれる時の彼は心持ち怒ったような感じだった。
それは緊張してたんだよね?
私との事、私の家族に認めて欲しくて、自分の存在を少しでも知って欲しくて…
彼の決心のお陰で、今日こうやって彼の実家に向ってる。
目的は私たちの結婚を認めてもらうことって…
やっぱり、緊張を解く事なんて出来ないよ。




* * *


ガチガチの志穂を横に乗せて車を走らせた。
ピンと背筋を伸ばし、落ち着き無く視線を彷徨わせている。


「だから、緊張しなくていいって…」

「そんなこと言われても… ムリ!」


そんなことを言い合いながら、ハァ… とため息を吐く彼女は憂いを持っていて、
そんな不安からか上目遣いの視線はドキッとするほど可愛い。
こんな彼女ははじめてだ。
まだ見ていない彼女の表情はいっぱいあるんだろうけど、それを見る度にやっぱり今見たいにドキドキするのか?
それはそれで楽しみではあるけど、いつもこんなになるとちょっと身が持たないかも…

今すぐ彼女に触れたい… 抱きしめて、キスして… それ以上も…


「…ヤバいな。そんな志穂って可愛いすぎ」


素直にそう呟いた。とにかく今は運転中。
彼女に近付くのは、停まってからだ。




* * *


滉平さんが運転する車は国道から脇道に入って行った。
そのまま住宅地に向う…
確実に家に近付いているのがわかって、緊張は高まって行く。


「あ、あの… 滉平さん、私、どこかヘンな所…」


と聞こうとした時、車が停まった。


「着いたよ」

「え! もう!!」

「うん。もう。
それから、志穂に変なとこない。昨日も思ったけど、綺麗だよ」


思わず顔が赤くなる事を彼が言って、驚いて彼を見ると優しく微笑む目があった。
それからそれがゆっくり近付いて来て… ! 軽く触れるだけのキスを落とした。


「ちょっ、 滉平さん!!」

「志穂、顔真っ赤…」


こ、こんなところで!
そんな非難の声は私の口からもれることはなかった。


「っふ… ん…」


『こんなところで、ダメ』とはわかってるけど、彼に応えてしまう。けどそれは仕方がないことだよね…


「志穂、あんまり緊張しないで、普通でいいから…
じゃないと、俺も緊張してくる。自分の住んでた家なのにさ…」

「ご、ごめんなさい… あ、あの… もう、大丈夫…」


ポンと滉平さんの手が肩に触れて、優しく背中を押してくれる感じ。
大丈夫。きっと何も問題ない。




* * *


「お帰り! 滉平」


迎えてくれたのは、ピンと背筋を伸ばして可憐に微笑む女の子?


「え、あれ? …もしかして… 雛? お前、雛? すげー、デカくなったな?」


滉平さんの嬉しそうな声。
この子は… そう、確かお兄さんの所の娘さんのはず…


「志穂、こいつ、兄貴のところの雛。俺の姪っ子」


そう言って紹介してくれるのは嬉しいんだけど… 私何か、睨まれてません?
雛ちゃんは滉平さんに抱きついて離れない。これって…


「雛、この人俺の…」

「滉平!!」


滉平さんが私を紹介してくれようとしているのを少女は遮ってしまった。
やっぱり、コレって…


「滉平は結婚出来ないよ! 今から、その人泣きながら帰るんだから!」


「雛、何言ってって、いいかげん離れる!」


「だってね。だってね! 滉平には赤ちゃんがいるんだよ!」


この空気って何?
一瞬にピキッと凍り付いて、誰も固まったまま動けない…
私も、今、この子が何を言ったのか、その言葉が頭に届くまでかなりの時間を必要とした。
少女の態度で、私の訪問は喜ばれていないかもしれないとは思ったけれど、コレって…


「…何言ってんだ? そんなわけ…」


って否定しようとする滉平さんの目も泳いでる。
それってやっぱり『身に覚えのある』ってこと?


「そんなわけ……… ない!」

「こ、滉平さん?」




* * *


なんだ? どういうことだ?
今、凄い爆弾落ちたんじゃないのか?
俺は今日志穂との結婚を親に報告するために来たんだよな?
そのために来て… 志穂を会わせて、反対されるハズないってタカをくくって…
『赤ちゃん』がいる?
俺、そんなこと聞いてないし… そりゃ、過去に付き合った人はいるけど、子供なんて…


「…何言ってんだ? そんなわけ…」


とにかく何か言わないと… 志穂も固まってる。
このままじゃ…


「そんなわけ……… ない!」


「こ、滉平さん?」


志穂がキョトンとした顔で俺を見てる。
けど、やっぱり、俺に子供なんているわけがない。だからはっきり『ない!』と言った。


「なくないもん。りゅう、出ておいで、ほら、りゅう!!」


雛が奥に向って何か叫んでる。『りゅう』それが名前?
カチャッとリビングのドアが開いた。
そこから2歳か3歳ぐらいだろうか、それぐらいの男の子が出て来て俺の顔を見て笑った。


「パーパァ」


遅くなり、申し訳ない!!
なかなか進まない…… というか、気分の問題?
次は出来るだけ早く更新出来るように頑張ります!
最近、キーボード打ってなかったけど、打ち出すとやっぱ気持ちいいわ〜〜*^^*

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