This is love 〜*

24


「滉平くんは、志穂の部屋でいいよね?」


堂々とそう言う兄の声に応じる言葉が出て来ない。 私の部屋って…
私の部屋?


お父さんは滉平さんやお兄ちゃんにお酒を勧めるだけ勧めて早々に部屋に帰って行った。
別に何も言わない。ダメもいいも… どうしてなんだろう?
「今朝は早かったんだ」そんなことを言いながら、気のせいか父の顔色は悪かった。


「なんだ? 違うのか? 客間の用意も面倒だろう?」


客間? そうか、泊まるってことはそういうこと…
部屋がいるんだ…
でも『泊まっていきなさい』って言ったのはお父さんで、でも部屋の事は何も言わなかった…
いつもお客さんがあって、泊まられる時は私に部屋の用意や必要なもの… 一言あったような…
それがなかったんだ。それはどういうことなんだろう?


「俺だったら、ここでも… 酔いだけさまさせてもらったら…」

「冗談だろ? 一応、まだ客をリビングで寝かす程常識無くはないんだけどね?」


だからって、私の部屋ってのも可笑しくない?
滉平さんはお客様なんだし、ここはやっぱり客間が正解なんじゃないの?
笑顔の兄の言葉には裏がいっぱい隠れていて、頭の中がクラクラした。


「父さんもその気のようだし、正式に話が決まるまでは、一応、客だろ?」


正式にって!
それが何をさしてるかなんて、私にもわかる。


「お兄ちゃん、そんなのまだ…! それにお父さん、その気って、
そんなわけない!」


そんなこと滉平さんの前で… それは、これまで以上の迷惑だよ!!


「まだって、挨拶しに来たんだろ?」

「それ、お兄ちゃんが無理矢理家に引き入れたんでしょ?」


そうよ。考えたらおかしい。
滉平さんも今夜は挨拶する気はないって言ってたのに、紹介なんて…
そりゃ、私もお付き合いしてるって言ってしまったけど…
あの場合、あぁ言わないとダメな気がして、言ったけど、正式なものじゃないはずで…
滉平さんと私の間にはそんな話一言も…
そんなこと思うと、ちょっと寂しいけど、実際、一言も出ていないんだから!
でも滉平さんの前では声に出すなんて出来なくて、チラッと彼を見た。


え、なんで? 何か、凄く滉平さんの顔、何かに堪えているような…


「…志穂の兄さんって、こんな人だったんだ?」

「ただの喫茶店のマスターと思ってた?」

「イエ。っていうか… もしかして、俺、マスターに良いように転がされてたのかなって…」

「それなら?」

「それなら? そうか、それなら、最後まで見ててもらうのもいいかと…」

「最後までって、本当にまだ決めてないのか? チッ」


チッてお兄ちゃん… それに滉平さんも… 一体何を言ってるんだろう?


「…今日、彼女が只管謝っていた理由がわかった気がする。
もうずっと『ごめんなさい』って、謝るのは俺の方なのに…
ッハァ… けど、証人お願いします」


笑顔を浮かべそんな事を言い合っていた2人がクルリと私の方を向いた。


「…あの、滉平さん?」


滉平さんがちょっと笑って、息を吸って吐いた。
なんだろう? どこか緊張しているような…
そう言えば、滉平さん、お兄ちゃんに『証人お願いします』って、なんの証人なんだろう?
滉平さんが一歩近付いた。トクンと心臓がなった。ドキドキと何故か速度を速める鼓動に顔が赤みを増す。
どうしたんだろう? 滉平さんの顔が真剣で…


「志穂、俺たち……、結婚しよう」


!! ………えっ? それって… 滉平さんが今言った言葉って…


「志穂、返事は?」


そう促したのはお兄ちゃん。
けど、今までそんなこと話した事無くて、そんな突然。
だってまだお付き合いだってしてなくて… えっ、違う? 私、滉平さんとお付き合いしてたの?
今日はじめて滉平さんに『好き』って言えて、お付き合いなんて… お付き合いなんて…
今日、はじめて好きだって伝えたばかりなのに…


「…志穂、考えられない?」

「えっ? あ、…違う… そうじゃなくて…」


考える所まで、私は…


「じゃ、どうなんだ?」


お兄ちゃんの言葉はキツい。キツいけど、たぶん私たちの事一番理解してくれてるのはお兄ちゃんだ。


「あ、あの… あの… ……」


2人が私を見てた。2人ともきっと私が『待って』って言ったら、きっといつまでも待ってくれる。
そのことがわかってるから…
大きく息を吸い吐いた。2人とも私の事をちゃんと考えてくれる人だから…


「…こ、滉平さん… あ、あの… よろしくお願いします!」

「こちらこそ…」


そう言った滉平さんに胸の前で組んでた手を引っ張られて、気が付けば私は滉平さんの腕の中にいた。
凄く温かな場所に、優しく包まれていた。
少し離れた所でお兄ちゃんが笑ってる。なんて私は幸せなんだろう…


その後にお兄ちゃんから聞いたお父さんの話に私は涙を零した。





遅くなりましたm(__)m
最近忙しく、停滞気味ですが、また読んでやって下さい

*気が向けば押して下さい。お返事はBLOGにて*
web拍手 by FC2
inserted by FC2 system