This is love 〜*

5


彼女の手を引いたまま玄関を乱暴に開け、小さな体を家の中に押し込んだ。
家に帰る間にかなり盛り上がってしまった気持ちは抑えが利かないほどで、
そのまま壁に彼女を押し付けはじめて彼女の唇に触れた。
軽くなんて言ってられない。深く貪るように唇を重ね、逃げる舌を追いかけ絡める。


「…ンッ、ンン……」


玄関で立ったままいつ終わるかわからないキスをした。
その後、力の抜けた彼女を抱き上げ、寝室のベッドに寝かせる。
こんなことならベッドの周りぐらい片付けておけば良かった…
っていうぐらいベッドサイドに置かれた本や資料をサッとのけ、彼女の上に覆いかぶさるように両腕を付いた。


「…あ、あの……」


オドオドと定まらない視線を部屋のあちこちに向け、握りしめた両手を胸の上に置く。
どうしていいかわからない。そんなところだろう…


「出来るだけ、優しくするから…」


俺はそんな当たり前の言葉しか言えず、彼女の顔を正面に向けその当たり前の言葉に忠実に、
その言葉に合うようなキスをした。
微かに彼女の首が縦に動くのを確認して、彼女の身を覆う地味な服に手を伸ばす。
ブラウスのボタンはかっちりと一番上まで閉じられていて、1つ1つはずしていくのが焦れったい。
露になった部分から順に唇を落とし、舌を這わせる。


「んっ…」


そんな俺のすることに彼女の体がビクビクと反応し、ギュッと閉じられた目からは小さな光が漏れていた。
彼女の目元から零れるものをソッと舌で拭い、最後にもう一度だけ彼女に問い掛ける。


「…本当に、いいんだな?」


一瞬の間を置いて、彼女の首がはっきりと縦に揺れる。
相変わらず目は閉じたまま、その上今度は両手の甲で顔まで隠している。
今の彼女の心境なんて気にする余裕はなくなった。
ただ目の前にある眩しい程に白く柔らかなものを自分のものにしてしまいたい。
その欲望だけ…




* * *


「っや!…」


カーテンを引かれた部屋に淫らな音が響いていた。






手を引かれるまま連れて来られた。彼の家の玄関を入るなり壁に押し付けられるようにキスをされた。
逃げるつもりははじめからなかったけれど、もう、本当に逃げ場がないんだ。
はじめてのキスなのに貪るような、絡み付くようなキスをされる。
ただでさえ真っ白な頭が完全に融けてしまいそうで立っているのもやっとで…
もうそこからは彼にされるがまま、靴を脱がされ、ベッドまで運ばれて…


「出来るだけ、優しくするから…」


そう言われてはじめて自分が怖がっているのを知った。
怖くて怖くて… でも、『優しくする』そう言ってもらえるなら…
本当はそんな必要ないだろうに、そんなふうに言ってくれるなら…
もういい… 


「…本当に、いいんだな?」


彼はまた聞いてくれる。
いいんだよ。
だって私からお願いしたのに、こんなふうに大事にしてもらえるのは、すごくきっと、嬉しいことなんだ。
彼にお願いしてよかったな。
だからしっかり頷いた。
顔を隠したのは、やっぱり怖かったのと恥ずかしかったのと…
たぶん凄い痛いんだろうな? って想像出来たから、そんな痛がってる顔見られたくなかったから…




「『や』じゃないだろ? 自分から言い出したんだから」


わかってるよ。
わかってる。けど…
胸や体の上を撫でていた彼の手はいつの間にか足の間にあり、奥に入った指がクチュクチュと淫らな音をたてる。
上がった息の荒い息づかい。勝手に口から漏れるヘンな声…


「はっ、は、んん、…ぅん、ん…」


彼の手や唇が触れる度にどんなに押し殺しても、堪えてもそんな声が出てしまう。


「…あっ、あっ! ん ぅんん」


口を塞がれ、彼の手がまた下から胸を揉み上げる。


「あっ、ダメ! そんな…」


彼の手が腿の後ろにあてられる。大きく足を広げられて… 中心に硬いものがあたっているのがわかった。


「…今更? じゃ、やめる?」


『やめる』その言葉に大きく首を振った。
違う! やめたいんじゃなくて!!
心配そうに私を見つめてくれる彼の手に自分の手を重ねて、最後の言葉を伝える。


「…めない。 やめないで… !」


一気に押し入ってきたものに体が裂かれてしまうんじゃないかって痛みがあって、一瞬息が出来なくなった。


「っあ、あ、っは、っは、…っは……」


上手く息が出来ない。
そんなつもりはないのに、ツッと頬を涙が流れた。




* * *


終わった後は上手く足に力が入らないんだってはじめて知った。
服を着るのもやっとで、言わなければいけない事が言葉にならない。


「シャワー浴びてく?」


彼は終わった後もやっぱり優しくて、裸のままギュッと抱きしめてくれた。


「少し、眠る?」


そんな小さな言葉1つ1つに首を振って、やっと言った一言は、


「帰ります。ありがとうございました」


よかった。なんとか言えた。
最初で最後のわがままだと、自分で決めた人に相手してもらえたんだ。
すごく優しくしてもらえたんだ。
だからお礼はちゃんと言わないと…


「あの、俺、滉平…」


送って行くと言ってくれたけど、ちゃんとお断りして部屋を出ようとしたとき、彼が思い出したように言った。
『コウヘイ… 滉平さん…』優しい響きの名前だな…


「えっと… 私… 高野 志穂です」


ぼんやりとしながらそう答えたら、クスッと笑う彼の声が聞こえた。


「知ってる。マスターの妹の志穂ちゃん。
これ… 明日、明日もおいで」


そう言って、私の手に渡されたものは、鍵…?





さてここまで順調!

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