This is love 〜*

4


えっと、今、私、何を言った?
一瞬にして頭の中は真っ白で、目は見開いて口も開いたまま…
ど、ど、どうしょ!!!
目の前にいる彼はやっぱりというか… 固まっている。
そりゃそうよ! そりゃそうよ! そりゃそうだけど…
お、思い出は欲しいよ。親が決めた相手とそのまま結婚じゃなくて、一度でいい自分の好きな人と…
す、好きな人? 私、この人のこと好きなの???
けど、話したのなんて今日がはじめてで、しかもあんなちょっとした会話とかしかしてないのに!
そりゃ前から気にはなっていたけど、だからって、だからって!


「…あの、今から?」


パニックを起こしているうちに彼の手が伸びて私の手をとった。
そのまま、まだ彼の手にあった携帯を押し付けられて…


「今からする?」


真っすぐ私の目を見て言う彼に自然と頷いていた。
頭の中は真っ白になったまま、彼の姿しか見えなくなった。
名前も知らない彼の事しか見えなくなってしまった。




♪♪♪♪♪〜




そのまま手を引かれながら歩いて行くと握ったままの携帯が着信を伝える。


「あの、電話鳴ってるけど…」


そう彼に言われるまで気が付かなかった。


「えっ、あ、あ… ごめんなさい。
って、お父さん! あ、ちょっと、ちょっと待ってて!!」




* * *




彼女の親からの電話。


赤い顔でボーッと付いて来る彼女は着信にも気付かないようで、一瞬迷ったけど、電話が鳴ってる事を伝えた。


「あの、電話鳴ってるけど…」


どうなんだ? これって…
確かにずっと気になっていた子で、見てて飽きなくて、可愛いなって思ってて…
少し元気のなかった今日はすごく気になって…
けどそれってそんな簡単にしていいのか?
それはやっぱり想い合ってるもの同士がすることで、俺はともかく彼女は俺のこと…
って、俺はともかくって、俺はともかくって… 彼女のことそんなふうに想ってるのか?
そりゃ、そこらにいる子とは違う感情はある。けど、それって…


「……はい。
あの、お父さん?」


すぐそこで彼女の声がする。
流石に正気に戻るかな? 『ごめんなさい!』とか言って、帰るかな?


「…う、うん。そう、兄さんのところで…
………ちょっと、うん… あ、あの、お腹痛くて… 今日は会社の方には…
うん、今日はちょっと兄さんのところで休ませてもらってから帰る。
うん、大丈夫… 休んだら治るから……」


アリバイ工作? マジなのか? マジで彼女、俺と…
「じゃ…」そう言って彼女は電話を切った。


「…もう、いい?…」


その問いに彼女は頷いた。


「俺ん家、この近くなんだけど… 来るか?」


そうだよ。場所。ホテルとかでもいいかもしれないけど…
ここからなら家の方が近いし…
このまま付き合いがはじまるなら家の方が…
付き合いがはじまるならか… それってやっぱりそうなんだよな?


手を伸ばすと、躊躇いがちだけど重ねてくれた。
こんなはじまり方も『あり』なのかもしれない。





ホント、思うけど、それでいいのか? 『あり』なのか?

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