目がさめたら

福音館 母の友 2009年2月号掲載作品



 ヒロくんが目をさますと、目の前に大きな水色のゾウが眠っていました。

 ヒロくんは、 びっくりして、そっとゾウからはなれました。

 ヒロくんが目をさました場所は、いつものへやではありません。森の中でした。

 ヒロくんは、少し歩いてみました。でも、森はずっと続いています。





 ヒロくんがどんどん歩いていくと、池がありました。

 ヒロくんは、「ママー?」と、小さな声でよんでみましたが、返事はありません。

 「ママー?」。今度は大きな声でよんでみましたが、やっぱり返事はありませんでした。

 ヒロくんはさびしくなって、とうとう泣きだしてしまいました。

 「おやおや、泣いているぼうやはだれ? ママとお水の中で泳ぎましょう」

 と、池の中から、カバのママが出て来ました。

 「ぼく、泳げないよ」。ヒロくんが言うと、

 「泳げないぼうやは、ママの子どもじゃありません」と、カバのママは水の中にもぐってしまいました。




 ヒロくんは、一人になりました。

 ヒロくんが、またさびしくて泣いていると、

 「おやおや、泣いているぼうやはだれ? 泣いてばかりでは、強い子になれませんよ」

 と、茂みの中から、ライオンのママが出て来ました。

 ライオンのママが、こわい顔をしていたので、ヒロくんは大声で泣いてしまいました。

 「泣き虫ぼうやは、ママの子どもじゃありません」

 と、ライオンのママは、一声うなり、茂みの中にかえって行きました。




 ヒロくんは、また一人になりました。どんなにまっても、ママは来てくれそうにありません。

 ヒロくんは、大きな声でママをよびながら泣きました。

 「おやおや、泣いているぼうやはだれ? ママがだっこしてあげるから、ここまでおいで」

 と、木の上からゴリラのママが出て来て言いました。

 「ぼく、木のぼりできないよ」。ヒロくんが言うと、

 「木のぼりできないぼうやは、ママの子どもじゃありません」

 と、ゴリラのママは木の上に行ってしまいました。




「ぼくのママはどこ?」。ヒロくんは、また歩き出しました。

 とぼとぼと歩いていると、ゾウが眠っているのが見えました。目がさめた時にいた大きな水色のゾウでした。

「ゾウさん、ボクのママ知らない?」。

 ヒロくんが眠っているゾウに聞くと、モゾモゾとゾウが動き目をさましました。

 ゾウは長い鼻でママのようにヒロくんの頭をやさしくなでました。そして、鼻でそっとヒロくんをだっこしました。

 ヒロくんがゾウの鼻にだきつき目をとじると、ゾウからはママのにおいがしました。






 そのとき、「ヒロくん、どうしたの?」と、ママの声が聞こえました。

 目をあけたヒロくんは、いつものへやにいて、ママの足にしがみついていました。

 手にはしっかりと水色のゾウのヌイグルミをもっていました。


おしまい










母の友に掲載された作品です。
モデルは我が家の長男とお気に入りのゾウのぬいぐるみ。
童話の壁紙って難しい〜 なかなかないものですね。
このころ我が家の長男はゾウのぬいぐるみがないと寝る事も出来なかった。
寝ても覚めても、抱っこしてましたね;;
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